2001年の旅で出会った少女
 僕がネパールを最初に訪れたのは、2001年三月のことだった。その年僕はユーラシア大陸を一周する長い旅をしていた。ネパールは九つ目の訪問国だった。東南アジアを回った後、バングラデシュからインドを経て陸路ネパールに入り、一週間かけてネパールの山村を歩き回った。

 その山歩きの途中で立ち寄った村で、僕が「美少女写真家」と名乗るきっかけを与えてくれた一人の少女と出会った。年は六歳か七歳ぐらいで、腕に幼い弟を抱きかかえて、柱の影からこちらの様子を窺っていた。僕と目が合うと恥ずかしそうに顔を少しだけ背けたが、笑いかけると安心したように頬を緩めた。髪の毛はパサパサで、鼻水を垂らしたあとが白く残っていた。どこにでもいる、ごく普通の田舎の娘だった。でも彼女の瞳にははっと息を飲むほどの輝きがあった。ただ可愛らしいというだけではなく、そこには凛とした気高さが宿っていた。

 特別な少女なんだ。ファインダーを覗いた瞬間、僕はそう感じた。彼女はある時期に現れて、ある時期を境に消えてしまう特別なオーラを身に付けた少女なのだ。シャッターを切るたびに、彼女は違う表情を見せた。まだ生え揃っていない前歯を見せて無邪気に笑ったかと思うと、その次の瞬間には母性の芽生えを感じさせるようなまなざしで、腕の中の幼い弟をじっと見つめたりした。


 少女と僕が一緒に過ごした時間は十分にも満たないほどわずかなものだったにもかかわらず、彼女のまっすぐな瞳の輝きは暗闇を飛ぶ蛍が残す光跡のようにいつまでも僕の記憶の中に留まり続けた。ネパールを離れて他の国を旅しているときも、日本に帰ってからも、僕は彼女のことをたびたび思い出した。

 僕は彼女についてほとんど何も知らなかった。年齢も名前も家族構成もわからない。ただ数枚の写真が手元に残っただけだった。しかしだからこそ想像する余地はたくさん残されていた。あの子は毎日どのような生活を送っているのだろう。何を食べ、何を学び、何を幸せに感じて生きているのだろう。どのような夢を持っているのだろう。そんなことを繰り返し何度も考えるうちに、実際に彼女の口からそれを聞いてみたいという思いが強くなっていった。
 そんなわけで最初の旅から三年後、2004年の春に僕は再びネパールを訪れることにしたのだった。


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