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子供達がようやく僕の存在に慣れ、クラスが落ち着きを取り戻した頃、先生が全員を整列させた。これから公園の周りを歩いて一周するのだという。小さな公園だから歩いたってたかが知れているのだが、子供達の有り余るエネルギーを発散させるには、歩かせるのが最もいい方法なのだろう。
僕も子供達の後について歩いたのだが、行進している間もトルコキッズたちのテンションの高さは変わらなかった。誰かが知っている歌の出だしを歌うと、全員がその後について合唱する。そうやってずっと歌い続けていたのである。
子供達が持ち歌を一通り歌い終わると、クラスのリーダー格らしい背の高い女の子が「マサ! ジャポン・ソング! ジャポン・ソング!」と声を張り上げた。あなたも日本の歌をうたってよ、というわけだ。もちろん、一人がそう言えば、クラス全員が「ジャポン・ソング!」「ジャポン・ソング!」の大合唱である。やれやれ、ここまで盛り上がってしまえば、歌わないわけにはいかない。しかし日本の歌といっても、何を歌えばいいのだろうか。君が代? 演歌? ・・・まさかね。
とっさに口をついて出たのは、「サザエさんの歌」だった。「お魚くわえたドラ猫・・・・」である。その選択に、深い意味はない。子供向けのアップテンポな歌を思い出そうとして、ふと頭に浮かんだのが「サザエさん」だったという、それだけである。
しかし意外なことに、「サザエさん」はトルコの子供達に大いに受けた。その後しばらく、「トルコ対日本歌合戦」は続き、僕は「赤とんぼ」や「ふるさと」や「上を向いて歩こう」などを次々と披露したのだが、いちばん反応がよかったのは、「サザエさん」だった。
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みんなはちきれんばかりの笑顔だったし、空は気持ちよく晴れ渡っていた。まさに「サザエさんの歌」の通りだった。子供達は二列に並んで、隣の子と仲良く手を繋ぎ、大きく口を開けて歌をうたう。どの顔にも、邪気というものが全くなかった。初夏の午後のピクニックを心から楽しんでいた。
遠足って、こんなに楽しいものだったっけ。僕は自分の小学生時代を振り返ってみた。弁当を作ってもらい、近所の駄菓子屋でおやつを三百円分買い、どこかの山にてくてく登って、頂上でお弁当を広げる。それが小学生時代の遠足だった。もちろん学校を出て違う場所に行くというイベントが楽しくないわけはないのだが、トルコの子供達のようにクラス全員で同じ歌をうたったり、手を繋ぎあって笑いながら歩いたという記憶はなかった。たぶん、そういうのは幼稚なことだ、と思っていたのではないかと思う。
シヴァスの子供達は、三十人全員が心の底から笑っていた。「遠足なんてつまんねーよ」と斜に構えている顔はひとつもなかった。どこをどう切っても笑顔が出てくる、「笑顔の金太郎飴」状態だった。
こんなに幸せそうな集団は、今までに見たことがなかった。どの顔も喜びに満ちていた。どの腕も目一杯振られていた。どの足も地面を力強く蹴っていた。美味しいものを食べ、青空の下で遊び、大声で歌う。それだけで人は幸せになれるのだ。そんな集団の中にいると、僕までも幸せな気持ちになることができた。笑顔は周りにも伝染するのだ。
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