お陰様で第4刷。1万1500部突破です!_
 写真集「アジアの瞳」の内容は、2001年に行ったユーラシア一周の旅の集大成。30ヶ国を巡る旅の中から厳選した写真約100枚+ショートエッセイという構成です。
(A5判変形 136頁・出版:スリーエーネットワーク)
 「アジアの瞳」は発売から12年が経ち、すでに絶版になっているので、「たびそら@通販部」でのご購入が唯一の方法です。著者サインとポストカード3枚をつけてお送りしています。
この子が表紙です 中身はこんな感じ


 東南アジアの家族はどこも子沢山だった。6人きょうだいや7人きょうだいは当たり前。だから、小さな弟や妹の面倒を見るのは、お姉ちゃんの役目になる。
 まだ10歳にも満たないあどけない少女が、弟や妹を抱き上げた途端に母親の表情を見せる。そんな瞬間を僕は何度も目にした。
 愛しいもの、守るべきものを見つめるときの温かい視線は、たとえ国や民族が違っていても同じだった。
「守るべきものを抱いて」(ミャンマー編)より
 なんて美しい家族なんだろう。ファインダーを覗きながら、僕は思った。確信に満ちた表情も、鮮やかな衣装も、均整の取れたスタイルも、全てが美しかった。
 バングラデシュの農村の暮らし向きは決して楽ではない。農作業は昔ながらの手作業に頼っているから、グローバル化からも見放されている。
 でも、彼らには耕すべき土地があり、帰るべき場所がある。両足をしっかり大地につけて、日々の暮らしを営んでいる。
 その揺るぎない事実が、この家族に毅然とした美しさを与えているに違いなかった。
「バングラデシュ編」より
 イラン人男性の特徴は、とにかく「濃い」ことである。彫りの深い顔立ち、顎と口元に蓄えた立派なひげ、腕や胸からのぞく剛毛。いずれをとっても、非常に濃い。
 しかしその外見とは裏腹に、彼らはとても人懐っこく、寂しがり屋でもあった。「家族や友達と一緒じゃない一人旅なんて、とてもできないよ」と彼らは口を揃えた。
 そんなイランの男達は、男同士の友情にとても厚かった。男二人で手を繋ぎ合って町を闊歩するのは当たり前。挨拶するときも、ベアハッグみたいにがっちりと抱き合うのだ。
 町で出会った石工の男達も、とても仲が良かった。冗談を言い合いながら一緒に働き、煙草で一服するときも、お互いの額をくっつけ合うようにして、同時に火を付けるのだった。
「働くのも一緒 一服するのも一緒」(イラン編)より
 ルーマニア北部の田舎町で、月に一度立つという家畜市に出かけた。野球場ぐらいある広場に、地元の農民達が持ち寄った馬や牛や豚が何百頭も集められていた。
 その中に、子馬を売りに来ている親子がいた。娘は子馬のことを自分のきょうだいのように感じているらしく、愛おしそうに頬をすり寄せたり、たてがみを撫でてやったり、鼻面にキスをしたりしていた。
 でも、この子馬はあくまでも売り物で、買い手が見つかれば少女の元を去っていく運命にある。彼女もそのことは十分に承知しているのだろう。子馬を見つめる少女の眼差しは、どこか悲しげだった。
 少女は子馬の頭をぎゅっと引き寄せて、耳元に何かを囁いた。ルーマニア語がわからない僕にも、それが別れの言葉だということは伝わってきた。
「別れの言葉」(ルーマニア編)より
 草原と空と雲。
 モンゴルの首都ウランバートルから、500kmジープに揺られても、それしか見えなかった。時々馬や羊の群れが草を食んでいるのが見えたが、人の姿は皆無に等しかった。
 遊牧民は草原の中にゲルというテントを立てて暮らしていた。隣のゲルまでは2キロもあるという。もちろん電気も水道も通っていないし、トイレさえないから、みんな草原の真ん中にしゃがみ込んで用を足していた。
 厳しい自然の中で生きていくのは簡単なことじゃない。だから遊牧民は大地が与えてくれる恵みに感謝し、血の一滴も無駄にはしない。
 シンプルで力強い世界。それがモンゴルの草原だった。
「大草原の朝の仕事」(モンゴル編)より
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