牛と少女の散歩道 (カンボジア 2005)
 「その瞬間」がいつ訪れるのかはわからない。それがいつ誰に宿るのか、それが自分にキャッチできるのかどうかもわからない。はっきりしているのは、「その瞬間」がなんの前触れもなく、突然やってくるということだけだ。

 カンボジアの農村をぶらぶらと歩いているときに、不意に目の前に二頭の牛を引いた少女が現れる。美しいだけではなく、生命力に溢れた少女だ。僕は反射的にカメラを構える。彼女は最初恥ずかしがって顔を背けている。僕は彼女との距離を保つために、ゆっくりと後ずさりする。一歩、二歩、三歩。やっと彼女が僕の方を見てくれる。しかもとびっきりの笑顔で。その瞬間を逃さないように、僕はシャッターを切る。

 今回の旅の「最初の一枚」は、牛を引く少女の笑顔だった。
 ほんの数秒の出会い。それがかけがえのないものになった瞬間だった。