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  たびそら > 旅行記 > ネパール編


 みなさんこんにちは。自称「世界水牛ファンクラブ・日本支部長」の三井です。
 「たびそら」ではこれまでにも愛すべき水牛の生態についてのレポートをお伝えしてきましたが、今回はネパールにおける水牛の交尾事情についてお伝えします。当たり前のことですが、水牛のセックスライフは人間のそれとは大きく異なっています。


 水牛というのはご存じのように(ご存じではないかもしれませんが)、無表情でクールな動物です。飼い主に棒で叩かれているときも、もぐもぐと草を食べているときも、乳を搾られているときも、だいたい同じような表情をしています。黒い瞳はぼんやりと虚空を見つめ、口元は常にくちゃくちゃと動き続けています。きっと彼らにも感情はあるのでしょうが、それを我々が読み取るのは至難の業なのです。そこがまた水牛ファンにとってはたまらないところなのですが。


 そんなクールな水牛が、交尾の時にどのような表情を見せてくれるのかは、ファンならずとも興味を引かれるのではないでしょうか。あくまでも無表情を貫き通すのか。それとも恍惚の表情に変わるのか。普段はシャイなように見えても、ベッドの上では別人格なのか(誰のことだ?)。ね、気になりますよね?

 交尾の際の表情をお見せする前に、ここでネパールにおける水牛の役割についてざっとおさらいしておきましょう。
 ネパールの農村では、ひとつの農家がだいたい2,3頭の水牛を飼っています。ミルクを採るのが主な目的なので(糞を燃料や堆肥に使うという目的もあります)、基本的にメスしかいません。オスが生まれたときには、ある程度成長した段階で殺して食べるのだそうです。ネパールのヒンドゥー教徒は牛は食べませんが、水牛なら(これもカーストによるらしいのですが)食べてもOKなんだそうです。

水牛の乳を搾る女性

 メスは通常3歳になると交尾が可能になります。水牛は人間とは違って楽しみのためにセックスをするわけではありませんから、妊娠可能になるとすみやかに発情期を迎え、めでたく交尾が完了すると、その11ヶ月後には子供を産みます。

 発情期を迎えたメスは興奮し、そわそわと落ち着きが無くなります。それを見た飼い主は村に一頭だけ飼っているオスの水牛をメスの元に連れてきます。このオスは交尾のためだけに飼われている「種水牛」です。彼はこの村に住むメスのすべてと交わるわけです。ハーレムですね。


 交尾のために飼われている特別なオスだから、当然のことながら性欲(交尾欲と言った方がいいのかな?)は旺盛です。メスの尻にぴったりと鼻先を寄せ、少し鼻息が荒くなったと思うと、やおら前足を大きく上げてメスの尻に覆いかぶさります。交尾の直前には太いペニスの先から細い鍵状のものがにゅっと伸びてきます。この部分から精液が分泌されるようです。


 交尾自体は驚くほどあっけなく終わります。10秒もしないうちに「こと」は済んでしまいます。しかしこの短い行為によってほぼ100%の確率で妊娠するということですから、たいしたものです。それに比べれば、人間のセックスはとても効率が悪い。いくら「早い人」でも10秒も持たなかったら、さすがにシャレにならないですからねぇ。


 そうそう、肝心の水牛の表情ですが、写真を見ていただければわかるように、普段との違いはそれほどありませんでした。息が荒くなったり、時々歯をむき出しにしたりはするけれど、基本的にはクールなままでした。オスが目をつぶっている写真があって、それだけを見れば快感を感じているように見えなくもないけれど、たまたま瞬きをしただけなのかもしれません。メスの表情はずっと同じでした。

 水牛の交尾は5,6回続きます。それでも全部にかかる時間は20分程度でした。ひと仕事終えて「お疲れさん」となった種付け役のオスは、再び自分の寝床に戻って葉っぱをむしゃむしゃと食べながら、他のメスが発情して出動が要請されるのをひたすら待つわけです。

 こういう人生もなかなか悪くないと思います。少なくとも、一度も交尾することなく食用肉にされてしまう他のオス牛よりははるかにマシではないでしょうか。



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