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  たびそら > 旅行記 > インド編(2015)


タージマハルを支えた女たち

 大理石を切り出す大規模な石切り場があったのは、カルナータカ州シャハハード近郊だった。このあたりには100メートル四方ほどの巨大な穴がいくつも開いていて、その中で白い大理石を切り出す作業が行われていた。


大理石の石切場


 大理石(石灰岩の一種)は比較的柔らかく加工しやすい岩石なので、ノミとハンマーを使ってくさびを打ち込めば、適当な大きさに割れる。石を切り分けるのは男たちの仕事で、それをトラックまで運ぶのは女たちの役目だった。運び役の方がはるかに重労働に見えるのだが、それをなぜか小柄な女性たちに任せているのだった。


石を切り分けるのは男たちの仕事

石をトラックまで運ぶのはなぜか女たちの役目だった





過酷な現場にも関わらず、女たちの表情はとても明るかった。カメラを向けると、とびっきりの笑顔を向けてくれた。
 運び役の女たちは実にたくましかった。見るからに重そう(3、40キロはあるだろう)な一枚岩を二人がかりでエイヤッと持ち上げて、頭の上に載せ、バランスを崩さないように注意しながら、しかし思いのほか早足ですたすたと歩いていく。

 あのタージマハルが白大理石で造られていることからもわかるように、インドでは昔から大理石が建築材として使われてきた。タージマハルは皇帝シャー・ジャハーンが亡くなった王妃のために建てた霊廟であり、夫婦の絆の強さを表すモニュメントとして語られることも多いのだが、その壮大すぎるがゆえに狂気をもはらんだ「愛の物語」を陰で支えていたのは、このような石切り場で働く無数の名もなき男女だったのである。



その墓石、インド産ですか?


 アンドラプラデシュ州東部には良質の御影石(花崗岩)がとれる場所があり、その周辺には石を切断して研磨する加工工場がいくつも建ち並んでいた。意外なことに(僕が知らなかっただけなのかもしれないが)、インドは世界有数の御影石の産地で、中国や欧米諸国などに御影石の原石を輸出しているという。

 御影石の特徴はとても硬くて耐久性が高いこと。日本で墓石や石灯籠として用いられていることからもわかるように、何十年も風雨にさらされても劣化が少ないタフな石材なのだ。墓石の需要が少ない(ヒンドゥー教徒は墓を作らない)インドでは、御影石は床材などの建築資材として用いられている。


御影石を切断する工場


 僕が訪れた工場では、重さが数トンもある巨大な御影石の原石を板状に切断する行程と、表面を研磨する行程を行っていた。

 石の切断に使われるのは、直径2mを超える巨大な回転ノコギリである。ギザギザの歯がついたディスクを電動モーターで高速回転させ、潤滑材として水を噴射しながら、ゆっくりと切っていく。スイッチを入れたあとは自動運転なので、オペレーターの主な仕事は指定された幅になるように石材の位置を微調整することである。何トンもある巨大な石の塊を、ハンマーでガンガンと叩いてやることで、ほんの少しだけ動かすのだ。







 切断された石材は、研磨材と砥石を使ってつるつるになるまで磨かれる。磨き終わった石の表面は非常になめらかで、鏡のような光沢があった。


研磨剤を使って御影石を磨く。インド産の御影石は日本にも輸出されていて、墓石のみならずビルの床や壁材としても使われているそうだ。



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