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  たびそら > 旅行記 > インド編(2015)


「男の市場」と「女の市場」


カリフラワーはインド料理でよく使われる食材だ。
 市場は、今も昔もたくさんのモノや動物や人が行き交う「インド的カオス」を凝縮した場所であり、額に汗して働く「はたらきもの」の宝庫でもあった。

 都市部では、最近になってやっと大型スーパーやショッピングモールが出店し始めたものの、大多数の庶民にとって商店街と市場が主な買い物の場であるのは変わらない。政府の大規模小売業に対する規制は強く、小売業の近代化は遅々として進んでいないのだ。その辺に「新しいものをどんどん受け入れ、昔ながらの街並みを壊していく」東アジアと、「昔からの制度や因習を守り続けている」南アジアとの地域性の違いが表れているのかもしれない。

 面白いのは、同じインドの中でも「男ばかりが目立つ市場」と「女ばかりが目立つ市場」が存在することだ。たとえばオリッサ州の市場は圧倒的に男が多いのだが、隣のアンドラプラデシュ州に入ると、逆に女性の数が優勢になるのだ。


オリッサ州の市場は、典型的な「男の市場」だった。

タマネギが詰まった南京袋を頭に載せた運び人。市場にはマッチョな男が多い。



市場で花飾りを売る男。常に水を振りかけて、花のみずみずしさを保っている。


 市場を歩けば、その土地が「男が強い」のか「女が強い」のかが一目でわかる。市場に男ばかりが目立つ地域は男性優位社会であるし、市場に女性の姿が目立つ地域は男女が対等(もしくは女性の方が強い)に近くなる傾向がある。

 写真を撮っているとそれがよくわかる。パンジャブ州やウッタルプラデシュ州のように男たちが口々に「俺を撮ってくれ!」と叫ぶような市場では、女性を写真に撮ることは難しい。「撮らないでよ!」と拒絶されることが多くなるのだ。しかしアンドラプラデシュ州のように市場のおばちゃんが陽気な笑顔を向けてくれるような土地では、今度は男たちが少しシャイになるのだった。


[動画]インドの市場を歩く。男と女、どちらが多いかにも注目!


アンドラプラデシュ州の市場には、おばさんたちの陽気な笑顔があった。













野菜も色鮮やかだが、おばさんが着ているサリーも実にカラフルだ。


 男が積極的な土地だと女は消極的になり、反対に男が消極的な場所では女が積極的になる。そうやって男と女がシーソーゲームのようにバランスを取っているのが面白かった。


アンドラプラデシュ州にある米の卸売市場で働いていたのは女性たちだった。農家から集められた米を袋詰めする作業を、ほっかむりを被った若い女たちが行っていた。日焼けと埃を防ぐためなのか、目だけがカメラをにらんでいるようにも見えた。

バナナは主に南インドで栽培されている。どの国でもそうだが、バナナは安くて手軽な栄養源として庶民に人気の果物だ。このバナナだけを専門に扱う市場があった。数十の房がついた枝単位で売り買いされるバナナは、70ccの小型スクーターにくくりつけられて、町まで運ばれていく。

 綿花市場には、何十人もの男たちが力仕事を行う、迫力ある光景があった。袋詰めされた綿花を肩に担いで、トラックへと積み込んでいるのだ。中身は綿だから見た目ほどは重くないが、これを一日に何十、何百も運ぶのは、やはりかなりの重労働だろう。
 この市場では、綿花を1キロ39ルピー(78円)で卸しているそうだ。仲買人によれば、綿花の国際価格はここのところずっと低迷を続けていて、物価の上昇が続いているインドでも綿花だけは安いままなのだという。
「綿花ってのはかさばるだけさ。これだけたくさんあっても、お金にしたら微々たるものなんだ」と仲買人は愚痴る。「俺たちは何十年もこの商売をやっているからどうにか続けているけど、できることなら違う仕事がしたいね」



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