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■ 
「盗難の心配」

 三井さんは旅先での盗難についてどうお考えですか?


■ 三井の答え

 講演などを行ったときに、もっともよく出る質問のひとつが「盗難について」ですが、これは僕に聞かない方がいいと思います。以前にも書きましたが、僕はかなり不用心な人間です。宿にパソコンは置きっぱなしにしているし、カメラはバッグに入れずに露出させて歩いています。
 そのようにして長い間旅を続けてきながら、いまだに大事なものを盗まれたことがないのだから、僕はきっと幸運なのでしょう。そんな幸運な人間に「幸運である秘訣」を聞くのは、あまり意味のあることだとは思えません。不運にも盗まれた人に、「どういった経緯で盗まれたのか」ということを聞いて、それを参考にすることはできますが。

 もちろん、僕だって「盗難になど絶対に遭わない」と確信しているわけではありません。むしろ「いつ盗難にあってもおかしくない」と思っています。こればっかりは「運」が大きくものを言うのです。昨日まで幸運であった者が、明日には不運に見舞われることもある。だから僕はもっとも大切な写真データーだけは失われないように最善を尽くしています。これだけはお金を出しても戻ってこないからです。バックアップを二重に取り、こまめに日本へも送っています。

 モノやお金を盗まれないように気をつけるのはとても大切ですが、心配しすぎるのも問題です。いいじゃないですか、カメラぐらい盗まれたって。また買えばいいのです。
 本当に大切なのは、いくらお金を出したって戻ってくることのないものです。そしてその大切なものを見つけるために、僕らは旅に出るのです。

 「盗まれたどうしよう」「病気になったらどうしよう」「飛行機が落ちたらどうしよう」とネガティブに考えてしまう人は、アジアを長く旅することなどできないでしょう。逆に言えば、アジアを長く旅していると、そういう心配事はとりあえずどこかに追い払って、物事のポジティブな面だけを見ようとするようになるのです。「なんくるないさー精神」です。

 旅先で得られる貴重な経験やシャッターチャンスに比べれば、盗難の危険なんて些末なことに過ぎません。カメラは首からぶら下げましょう。そのためにストラップが着いているのです。そして旅を心から楽しんでください。なんくるないさーで行きましょう。




■ 「ホテルは予約するもの?」 

 いつも<たびそら>写真と解説記事を興味深く、また楽しく拝見しています。
 さて、お聞きしたいことは、三井さんが世界各地を長期に旅行中での宿舎の見つけ方です。
 一般的には、インタ−ネット検索や旅行代理店経由で予め申し込むことが多い状況ですが、三井さんのような長期滞在の場合には、それ以外の方法が多いかとと思います。
 特に、現地宿舎の探し方(事前か現地か)、費用、宿泊時の配慮事項などあればよろしくお願いします。
 滞在国や各地の慣習や気候・風土などによって多少違いがあるのでしょうか・・・・・
 多くの場合、三井さんは一人旅かとおもいますが、その場合のポイントや今までの経験例などお願いいたします。


■ 三井の答え

 宿については以前にも書いたことがありますが、僕はホテルの予約というものを今までにただの一度もしたことがありません。いつも直接宿まで行って「部屋はありますか?」と聞いています。満室だったら他を当たるし、部屋があれば見せてもらって泊まるかどうかを決めます。
 一度だけ、ロシアのモスクワで空き部屋があるか確認するために電話をかけたことがありますが(モスクワのホテルは郊外の辺鄙なところにあるうえに、よく満室になると教えられていたので)、それ以外は全て飛び込みです。

 それでも、その街にある宿が全て満室になっていて途方に暮れたという経験は一度もありません。よほどのハイシーズンでもない限り、アジアで宿にあぶれるということはまずないんじゃないかと思います。
 もっともこれは「宿の質にこだわらなければ」という条件付きであって、「バスタブがあって、エアコン付きで、夜は静かで」といった旅行者としてごくまっとうな要求を満たすホテルが必要なら、やはり事前に予約した方がいいでしょう。地球の歩き方なら「中級〜高級」、ロンリープラネットなら「Top end」「Midrange」に区分されているようなホテルですね。

 僕の宿の選び方は実に適当です。9割は宿の外観だけで決めてしまいます(題して「宿は見た目が9割!」なんてね)。安っぽそうな外観の宿は実際に安くて薄汚いし、ある程度立派な「なり」をした宿だと、部屋もまずまず清潔で値段もそれなりに高いのです。ぼくはいつもほどほどに汚い宿を選んでいます。
 そして、宿を選ぶ際に僕がもっとも重視しているのは、「宿の居心地の良さ」や「ファシリティーの充実」ではなくて、「すぐに見つかるかどうか」なのです。町に着いたら、すぐに宿を決めて荷物を置き、町歩きを始めたいと思っているので、宿探しに時間をかけたくないのです。
 だから目についた宿に入ってみて、「悪くないな」と思ったら、スパッとそこに決めてしまいます。何軒も宿を回って条件の良さそうなものを選ぶ、ということはほとんどしません。どうせ一日しか泊まらないんだし(ほぼ毎日移動します)、安くても高くても、清潔でも汚くても、どっちでもいいのです。

 例えば、昨日滞在していたインドのワランガルという町では、1泊75ルピー(200円)とインドでもかなり安い部類の宿に泊まりました。しかし、ここは値段相応かそれ以上に汚くて(数週間掃除された形跡がなく、机には埃が積もっていた)、幹線道路に面しているので夜中までうるさくて、というかなり悲惨なところでした。はっきり言ってハズレだったのですが、それでも「どうせ一晩寝るだけなんだから」と諦めて早々に眠りました。
 反対に、今日泊まっているハイダラバードのホテルは1泊475ルピー(1300円)もしました。これは僕がこれまでインドで泊まった宿の中でももっとも値段が高い宿なのですが、さすがに高いだけのことはあって、とても静かだし、蛇口をひねれば熱いお湯が出る(!)し、ベッドも広々としています。しかしここに決めたのも、「たまには高い宿でくつろぎたい」と思っていたからではなく、「たまたま看板が目に入ったから」という理由なのです。
 このように、僕は宿にこだわらないで旅を続けています。もちろん安くて清潔なら言うことはないけれど、ある程度なら高くても納得してしまうし、ある程度なら汚くても諦めてしまう。要するに目の前に宿があればオーケーなのです。

 ご質問の件に戻りますが、一度思い切ってホテルを予約しないで旅をしてみるのもいいんじゃないですか? ひょっとしたらトラブルに巻き込まれるかもしれませんが、でもきっと何とかなりますよ。今まで泊まったことのない安宿に泊まってみるというのも、新鮮な経験になるかもしれません。
 予定を決めてそれに沿った旅よりも、偶然に任せる旅の方が断然面白い。僕はそう思います。




■ 「三脚とカメラバッグ」 

(1)三脚
旅にでかけるときに三脚をもっていくとかなり不便だと思うのですが、でも風景写真など撮る際には必要だと思います。小さいデジカメ用の小さい三脚などありますが、一眼のデジカメは小さい三脚はたえられそうにもありません。三井さんは、三脚はもって歩きますか?三脚を持っていかないとしたら何を三脚のかわりにしていますか?

(2)一眼カメラの持ち運び方
三井さんはどのようなバックに一眼カメラを入れて持ち歩いていますか?カメラがすっぽり入る三角形のバックもあれば、小さい四角いバックもありますね。それこそいくつもカメラをもっていくのなら大きなかばんが必要でしょうが、ひとつのカメラにレンズは2本くらいだとしたらどのようなバックが移動に適していると思いますか?


■ 三井の答え

(1)僕は三脚を旅に持って行ったことがありません。重いし、かさばるし、設置に時間がかかるし、面倒くさがり屋の僕にとってはあまりメリットを感じない道具だからです。
 もちろん風景写真を撮る人、特に夕景や夜景を撮りたい人には必須ですね。というか普通の写真家は三脚ぐらい持っています。僕がどうかしているのです。どうかしている僕は、ISO感度を上げることで手ぶれを防いでいます。

(2)カメラバッグは悩ましい問題ですね。実は僕も「これだ」と思えるカメラバッグにまだ出会っていません(良いカメラバッグと、良いサンダルと、良い友に出会うのはとても難しい。というのが僕の持論です)。持って行くカメラの種類やレンズの本数、三脚の有無などによって大きく変わるでしょう。
 2001年の旅では小さめのショルダーバッグを持って行きました。レンズ交換を前提とすると、このタイプが普通です。使い勝手も悪くない。でも肩が疲れますね。
 2004年の旅では、ヒップバッグを使っていました。ウェストポーチの大きい版みたいなものですね。これはショルダーバッグに比べると持ち運びが楽でした。ただし機材はあまり入りません。
 2005,2006年は専用のカメラバッグを持っていませんでした。国から国、あるいは町から町への移動のときにはリュックに入れますが、町を歩くときにはカメラは「裸」で肩から提げていました。どうかしていますね(笑)。でも一番楽です。




■ 
「キャッチライトの写し方」

 写真集「アジアの瞳」「美少女の輝き」「子供たちの笑顔」を拝見しています。いずれも素晴らしい写真集です。生き生きとした子供たちの表情に、何度見ても感動します。
 文中から身軽なスタイルで、路地裏の中まで入って、苦労して撮影されている様子が良くわかります。
 「写真は心で写せ」と言われていますが、三井さんの写真は、その手本のような作品です。
 そこで写真について、質問をさせていただきます。
 どの写真も瞳が見事に輝いています。自然の光なのか、ストロボ光なのでしょうか。どのようにしてキャッチライトを入れておられるのか教えてください。企業秘密と思いますが、あつかましい質問で恐縮です。



■ 三井の答え

 キャッチライト(アイキャッチ)というのは、瞳の中にキラキラと光る反射光のことです。
 僕は写真撮影に一切ストロボは使っていませんから(もちろんレフ板も)、キャッチライトが入っているとしたら、自然光ということになりますね。

 ご質問は「どうやってキャッチライトを入れているのか」ということですが、「自然に入っていた」というのが正直な答えです。
 僕は今までに、キャッチライトを意識して写真を撮ったことはありません。撮影時には、それ以外に考えるべきこと、注意を払うべきことが山のようにあるからです。構図、光の質、シャッタースピード、そして何より被写体となる相手とのコミュニケーションについて。それらをマルチタスクみたいに同時進行で考えているわけで、とてもキャッチライトのことまでは気が回らないというのが本音です。

 キャッチライトといえば、松浦亜弥がアイドルとして全盛期だった頃に、彼女がプロモーションビデオの撮影でキャッチライトを発生させるための特別な照明装置を使っているということを紹介していました。確かにあれはすごい装置でした。アイドルっていうのはここまでやるんだなぁと感心したことを覚えています。

 もちろん僕はモデルやアイドルを撮影しているわけではありません。スタジオもなければ、ストロボさえない。被写体は気紛れで飽きっぽく、二度と同じ表情はしてくれません。
 だから「このように撮りたい」「こういう表情をしてもらいたい」と思っても、ほとんどの場合はその通りにならないのです。そのような限定された条件の中で、自分が「これだ」と思える瞬間を切り取る。それが僕にとっての旅写真なのです。

 キャッチライトとは、いい表情といい光を捉えることができたら、そのご褒美としてたまに与えられるもの。僕はそんな風に考えています。
 以下の3枚の写真はキャッチライトが「ご褒美」としてもらえた好例です。ご参考までに。
 ・ミャンマーの少女
 ・ネパールの少女
 ・東ティモールの少女




■ 「暇つぶしの方法」

こんにちは、旅空日記の質問を拝見していて私も1つ伺おうと思いました。
それは暇な時間のつぶし方をどうされてますか?ということです。

私も最初のころは飛行機での移動中や空港での待ち時間などは言うに及ばずバングラディシュでの滞在時、部屋に帰ってから何で暇をつぶすか、には結構困りました。
CDのストックは結構あるのですが電気が来るとは限りません、というか来ないほうが多いので・・・。文庫本なども本棚いっぱいありますが意外とあっという間に読み終わってしまいます。

紆余曲折の末、今はPSP(プレイステーションポータブル)を持参するようになりました。
これなら場所もとりませんし空港でも移動中でも家でも大丈夫です。
又充電も会社(工場区は電力は優先供給される)で執務中にできます。
又ゲームだけでなく映画なども見れます、私にとっては国内においても出張時の必需品となりました。

「良い大人がゲーム遊びですか」と苦笑いもされる方も居られますが、実際海外赴任経験のある人は「なるほど!それは良いですね」と納得してくれます。
また「いや私もなんですよ」とかばんから任天堂DSを出される方もちらほら出るようになりました。

三井さんは移動中や乗り継ぎ待ち、宿などでの暇つぶしにはどんなことをされているのでしょうか。


■ 三井の答え

 僕はハイテク武装(?)した旅人ですから、暇つぶし対策はばっちりです。
 まずはiPod。これは旅のお供として欠かせない存在です。森永のキャラメル(古い!)の出る幕ではありません。最近、一段と小さいシャッフルも発売になったので、更に携帯性が高まったようです。長い移動中には頼もしい味方です。アジアのバスのうるさすぎるカーステレオにも負けません!

 それからなんと言ってもパソコンです。写真の保存や旅行記の執筆などにも不可欠な道具ですが、暇つぶしの道具としても優秀です。例えば僕は百科事典のCD−ROMを持って行って、暇なときに読んだりしています。
 でもゲームはやりません。以前バルト三国のラトビアを旅しているときに、ウィンドウズに付属している「マインスイーパ」というゲームにはまっちゃって、それをしているだけで丸一日が潰れてしまって愕然とした経験があるので、もうゲームには触れるまいと誓ったのです。
 あの単純な「マインスイーパ」でさえあれほどの中毒性があるのだから、今流行のPSPなんかやっちゃったら、大変なことになりそうですから。

 本もよく読みます。もちろん日本から持っていったものはすぐに読み切ってしまいますが、バンコクやカトマンズなど旅行者が集まるところだと、日本の文庫本などを調達することも簡単です。まぁバンコクの古本屋なんかだと、まともな本がほとんどなくて、赤川次郎が100冊ぐらい並んでいて、げんなりとさせられるけれど(たぶん売れ残りなんでしょうね)。

 今年も一緒に旅をしたアメリカ人のウィリアムは、海外でも使える携帯電話を持っているので、それで日本にいる家族にメールを打ったりしていました。モロッコの田舎でもちゃんと繋がっていて、たいしたものだと感心しきりでした。
 ちなみに僕は日本にいるときも携帯電話を持っていない人間なので、こういう芸当はできません。



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