ユーラシア一周 (2001年)

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小学校 (バングラデシュ 2001)

スリモンゴルという田舎町にある小学校の側を通りかかったときも、校舎から飛び出してきた子供達が僕の周りを取り囲んだ。 「あなたはこの学校にやってきた最初の外国人なんです」  興奮して騒ぎ回る子供達を叱りつけながら、先生が言った。突然の訪問者に驚いたのは先生も同じだったが、せっかくだからと授業を一時中断して、僕を校舎に招き入れてくれた。  先生は全学年をたった一人で教えていた。バングラデシュの学校は人員不足なのだろう。だからと言うわけではないけれど、僕は少しの間だけ先生に代わって教壇に立つことになった。あなたの国のことを子供達に教えてもらえないだろうか、と頼まれたのだ。 「日本はバングラデシュのずっと東にある島国です」  僕が一文を英語で話すと、先生がそれをベンガル語に訳した。  そして、日本とバングラデシュの人口はほぼ同じなのだと前置きしてから、両国の違いを話した。自然環境の違い。宗教の違い。家族の違い。校庭での騒ぎとはうって変わって、子供達は静かに僕の話に耳を傾けてくれた。遠い星からやってきたエイリアンを見るようだった視線が、少し変わったように感じた。 「今日はこれで授業を終わります」  僕の話が終わると、先生は言った。 「まだお昼前ですが、まぁいいでしょう。今日は外国人が来た特別な日だ」  もちろん子供達からはやんやの歓声が上がった。ここでは、外国人の来訪は大型台風の襲来にも匹敵する出来事のようだった。

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