「その籠には何が入っているの?」
ラオスの女性はとても働き者だった。男性の方はのんびりと言うかぐうたらとしていて、女性はいつも忙しそうにしているというのが、東南アジアでは当たり前の光景だった。働き者なのは少女達も同じで、お揃いの竹籠を肩にさげて農作業を手伝いに行く女の子の姿を、よく目にした。
「その籠には何が入っているの?」
僕は歩いてきた少女の一団に訊ねてみた。見知らぬ外国人が突然話しかけてきたので、少女達は目を丸くしていたが、僕が覚えたてのラオス語をいくつか披露すると、表情が和らいだ。
少女達の竹籠に入っていたのは、一本のナタだった。畑の雑草を刈るのに使うよ、と一人の子が身振りで教えてくれた。お化粧道具でもシステム手帳でも携帯電話でもなく、一本のナタ。ところ変われば、女の子のバッグの中身もまったく変わってしまうものなのだ。